車内で調理して販売するキッチンカーの開業に必要な資格・許可は2つです。費用は講習料1〜1.5万円程度、申請から許可取得まで1〜2ヶ月が目安。手続きの数は少なくても、順序を間違えると車両の改修が必要になることがあります。この記事で資格や許可の取得方法・費用・手続きの流れと、事前に知っておきたい注意点をまとめています。
- 必要なもの:食品衛生責任者(資格)と飲食店営業の営業許可(許可証)の2つ
- 費用の目安:食品衛生責任者の講習料 1〜1.5万円程度(地域差あり)。営業許可の申請手数料は自治体ごとに異なる
- 期間の目安:準備開始から許可取得まで 1〜2ヶ月程度
キッチンカー開業に必要な資格と許可は2つ
「資格って、いくつも取らないといけないのでは」と思っていた方も少なくないのではないでしょうか。
実際に必要な公的手続きは以下の2つです。
食品衛生責任者と営業許可の役割
食品衛生責任者は「人」に対して与えられる資格、飲食店営業の営業許可は「店舗(車両)」に対して交付される許可証です。
- 食品衛生責任者:都道府県の食品衛生協会が主催する講習会を受講すれば取得できる。その日のうちに修了証が発行される
- 営業許可:車両と仕込み場所の設備が基準を満たしているかを保健所が確認したうえで交付される。有効期限は5年(更新あり)
どちらか一方だけでは調理・販売を始めることができません。両方を揃える必要があります。
調理師免許は必要?
キッチンカー開業に調理師免許は不要です。料理の専門教育を受けていなくても、食品衛生責任者の資格と営業許可があれば調理・販売を行えます。
一方で、調理師・栄養士・製菓衛生師などの資格をすでに持っている場合は、食品衛生責任者の養成講習が免除されます。その分の手続きが省けるため、該当する方は保健所に資格証を提示して確認してみてください。
食品衛生責任者の取得方法と費用
食品衛生責任者は、各都道府県の食品衛生協会が主催する養成講習会を受講することで取得できます。申し込みは各都道府県の食品衛生協会のWebサイトから行います。
講習会の内容と受講料
講習はおおむね1日・約6時間で、食品衛生学・公衆衛生学・食品衛生法などを学びます。科目ごとの時間配分は実施団体により異なるため、申し込み先の案内を確認してください。
受講料は地域によって異なり、おおむね1〜1.5万円の範囲です。一度取得すれば全国共通で使え、有効期限もありません。更新や再講習も原則不要で、別の都道府県で出店する際も修了証を提示すれば再受講は不要です。
オンライン受講という選択肢
2021年度(令和3年度)から、オンライン受講に対応する自治体が増えました。動画形式で自分の都合のよい時間に視聴でき、確認テストに合格すると修了証が発行されます。まとまった時間を取りにくい方にとっても、受講のハードルが下がっています。
講習が免除されるケース
以下の資格をすでに持っている場合、養成講習会が免除されます。
- 調理師
- 栄養士・管理栄養士
- 製菓衛生師
- 医師・歯科医師・薬剤師・獣医師
- 船舶料理士
- と畜場法に基づく衛生管理責任者
該当する場合は、保健所に資格証を提示することで「食品衛生責任者」として届け出ることができます。詳細は管轄の保健所または食品衛生協会に確認してください。
営業許可(飲食店営業)の取得手順4ステップ
2021年6月の改正食品衛生法の施行により、キッチンカーの営業許可は「飲食店営業」に一本化されました。申請先は自治体によって異なり、車庫・仕込み場所・申請者住所・主たる営業地などを基準に決まります。まず出店予定エリアの保健所に確認してください。
ステップ1:保健所への事前相談
車両の図面と提供予定メニューの一覧を持参して、保健所で事前相談を行います。確認するのは2点です。
- 設計どおりの設備で許可が下りるか
- 提供メニューに対してタンク容量が足りているか
この事前相談を省いて車両を発注してしまうと、納車後に「シンクの大きさが基準を満たさない」「給水タンクの容量が不足している」と指摘されるケースがあります。そのまま改修となれば、高額な費用を伴います。車両の発注前に保健所へ相談しておくことで、こうしたリスクは避けやすくなります。
ステップ2:書類提出
車両が完成したら、必要書類を保健所に提出します。提出の目安は施設完成予定日の10日前です。自治体によっては15日前以上を求める場合もあるため、早めに担当者と検査日程を打ち合わせることをおすすめします。
ステップ3:実地検査
検査当日は、提出済みの書類と照らし合わせながら設備を確認します。確認される主な項目は以下の通りです。
- 給排水設備(シンクの大きさ・数)
- 給水タンクと排水タンクの容量
- 保管設備(食材・食器の保管状況)
- 手洗い設備
- 車両の構造と清掃のしやすさ
ステップ4:許可証交付
検査をパスすると、後日「営業許可書交付予定日のお知らせ」が届きます。指定された交付予定日に、保健所から案内された書類を持参して許可書を受け取ります。必要な持参物は自治体によって異なるため、事前に確認してください。
給水タンク容量で変わる「提供できるメニュー」の範囲
2021年6月以降、キッチンカーの給排水タンク容量は3つの区分に統一されました。どの区分を選ぶかによって、提供できるメニューの範囲が変わります。
40L・80L・200Lの違い
タンク容量 | 対応メニューの例 |
|---|---|
40L | コーヒー、ドリンク類、簡単な盛り付け |
80L | クレープ、サンドイッチ、ホットドッグなどの軽食 |
200L | ラーメン、うどん、カレー、スープなど仕込みを伴う本格調理 |
200L区分では、車内での仕込みにも対応できます。認められる作業の範囲は自治体によって異なるため、業務計画書をもとに保健所で確認してください。
また、2021年6月以降は手洗い設備の水栓に、洗浄後の手指の再汚染を防止できる構造(レバー式・センサー式・足踏み式など)が求められています。
提供メニューから逆算する設備選び
設備選びの順序は「メニューを決める → 必要なタンク容量を決める → 車両仕様を決める」です。この順序を逆にすると、車両が完成してから希望のメニューが提供できないという事態になりかねません。まずは売りたいメニューを書き出し、そこから必要な区分を判断します。
キッチンカー開業に必要な仕込み場所の確保
営業許可の申請には、仕込み場所の届出も必要です。一般的な自宅キッチンをそのまま仕込み場所として使うことは、原則できません。営業許可を取得した施設での仕込みが求められます。
仕込み場所の選択肢
仕込み場所として認められる主な選択肢は3つです。
- レンタルキッチン・シェアキッチン:営業許可を取得した施設を時間単位で借りて使う施設です。初期費用を抑えながら始めやすく、開業初期に選ぶ方が多いです。
- 自宅キッチン(改修後):自宅キッチンを営業許可の基準に合わせて改修します。費用と手間はかかりますが、長期的には安定した運用ができます。
- 車内仕込み:200Lタンク搭載の車両であれば、車内での仕込みが認められる場合があります(自治体により可否が異なります)。
地域差と営業許可の範囲
キッチンカーの営業許可の効力範囲は、自治体によって取り扱いが異なります。
営業許可の効力範囲は都道府県で異なる
- 管内全域で営業可能な地域:1つの許可で都道府県内のどこでも営業できる
- 一部地域のみ有効な地域:取得した保健所の管轄内に限られる
複数の地域をまたぐ場合、それぞれの管轄保健所で別途許可が必要になるケースがあります。仕込み場所の基準や車内で認められる調理の範囲も自治体ごとに違いがあるため、出店予定地の保健所への確認は省けません。
キッチンカー開業の流れと準備チェックリスト
着手の順番を整理します。
- 提供メニューの決定(最初に決める)
- 食品衛生責任者の養成講習会への申し込み・受講
- 出店予定地を管轄する保健所への事前相談
- 必要なタンク容量と車両仕様の確定
- 仕込み場所の確保
- 車両の発注・製作
- 営業許可申請書類の準備と提出
- 実地検査
- 許可証交付
- 営業開始
メニュー → 保健所相談 → 車両発注の順序を守ることが、後戻りのない準備につながります。開業エリアの保健所には、準備の早い段階から相談を入れておくと、地域ごとの運用ルールを踏まえた準備が進められます。
まとめ
キッチンカー開業に必要な資格と許可は、食品衛生責任者と営業許可の2つです。食品衛生責任者は6時間の講習で取得でき、全国共通・有効期限なし。営業許可は保健所への事前相談から始まる4ステップで進み、有効期限は5年です。
給水タンクの容量によって提供できるメニューの範囲が変わるため、車両の仕様はメニューを決めてから選ぶ順序が重要です。仕込み場所の確保や許可の効力範囲は自治体ごとに異なります。最新の運用ルールは、管轄の保健所に直接確認してください。


