週末のマルシェで完売した。ランチタイムに列ができた。それなのに、月末になってみると手元に思ったよりお金が残っていない…。キッチンカーを始めて間もないうちに、こういう感覚を持つ方は少なくありません。
その背景には、原価率や利益率といった数字が見えにくいという事情があります。この記事では、数字が苦手な方でもイメージできるように、原価率と利益率の考え方を整理していきます。
原価率と利益率ってなに?
原価率と利益率、なんとなくわかっているようでも、いざ説明しようと思うと意外と難しいもの。どちらも大事な指標なので、まずは基本から整理しておきましょう。
原価率とは
原価率とは、売上に対して食材費がどれくらいの割合を占めているかを示す数字です。
計算式はシンプルで、「食材費 ÷ 売上 × 100」 で出てきます。たとえば、1日の売上が2万円で食材費が6,000円なら、原価率は30%です。
飲食業の原価率は30〜40%が一つの目安です。日本政策金融公庫「小企業の経営指標調査」(2024年公表)からも、一般的な飲食店の原価率は平均で約37%であることがわかります(原価率=(1-売上高総利益率)×100で算出)。
利益率とは
利益率は、売上からすべてのコストを差し引いたあとに残る利益の割合です。ここでの利益率は、自分(オーナー)の人件費も含めて差し引いたあとの数字を指します。
原価率が見るのは食材費だけです。一方の利益率は、車両の維持費・駐車場代・消耗品・出店費用なども含めたすべてのコストを差し引いた割合です。同じ売上でも、かかるコストが多ければ利益率は下がります。
2つの違いをひと言でまとめると、「原価率=売上のうち、食材費は何%か」「利益率=売上のうち、全コストを差し引くと何%残るか」となります。原価率はなるべく抑えめに、利益率は高い状態を保てることが理想です。原価率を抑えることは、利益率を上げるためのひとつの手段になります。ただし、量を減らしたり食材の質を落としてまで下げると、満足度やリピートに響くこともあるので、バランスを意識したいところです。
キッチンカーで利益が残りにくい理由
キッチンカーは家賃や人件費といった固定費を抑えやすい一方で、売上があっても手元に利益が残りにくくなる落とし穴があります。理由をいくつか整理してみます。
廃棄ロスが出やすい
仕込みをしすぎたり、天気や出店場所の集客が読めなかったりで、食材が余ることはよくあります。売れ残った食材は原価だけかかって売上にならないので、その分だけ原価率が上がります。
少量仕入れはコストが高くなりやすい
まとめ買いができない場合、1回あたりの仕入れコストが割高になりやすい傾向があります。仕入れ先や量によって差はありますが、固定店舗と比べて、まとめ買いによる割安効果が出にくい場面は多いです。
値付けが感覚になりがち
「このくらいの価格なら売れそう」「なんとなく高すぎるかな…」と、感覚でメニューの値付けをしていると、気づかないうちに利益がとれなくなっていることがあります。お客様との距離が近く、いつも顔が見えるキッチンカーでは、ついサービスしてあげたい気持ちが先に立ち、値付けが甘くなりやすい側面もあります。
キッチンカーで利益を出す3つの考え方
ここからは、利益を残すために意識したい3つの視点を整理してみます。
現状を数字で把握する
まず必要なのは、今の状態を知ることです。1日の売上と食材費だけでいいので、メモしてみてください。
アプリや表計算ツールでもいいですし、最初は手書きでも全然OKです。1週間分のデータがそろうだけで、自分の原価率のおおよその傾向が見えてきます。完璧な帳簿を作ろうとしなくていいので、まずデータを積み上げることから始めましょう。
数字の管理を続けるには、仕組みを作ることが大切です。毎回ゼロから計算するのは続かないので、テンプレートを用意しておくのが現実的です。Googleスプレッドシートなどの表計算ツールを使えば、売上・食材費を入力するだけで原価率が自動計算できるシートを作ることができます。また、キッチンカー向けの経営管理アプリもあるので、気になる方は実際に使い勝手を試しながら自分に合うものを探してみてください。
続けられるかどうかが重要なので、自分が無理なく管理できる方法で始めてみてください。
廃棄と仕込み量を調整する
仕込みは多めにしておきたくなりますよね。でも、余ったときのダメージは想像以上に大きくなります。
直近の売れ行きを記録しておくだけでも、仕込み量の判断がしやすくなります。曜日・天気・出店場所によって売上が変わることが多いので、パターンをつかんでいくと廃棄が減らせます。作れるけど回せない状態にならないためにも、「仕込みすぎない」という視点は意外と見落としやすいところです。
値付けを「感覚」から「計算」に変える
メニューの値段を決めるとき、「食材費の何倍なら利益が出るか」を逆算してみると、見え方が変わります。
たとえば、1食あたりの食材費が300円なら、仮に原価率を30%に設定した場合は1,000円前後が計算上のひとつの基準になります。もちろん、出店場所や競合状況によって価格は変わってきますが、「感覚」ではなく「計算から出た数字」を一度確認しておくだけで、値付けの判断がしやすくなります。
ここで出した価格は、あくまで食材費をもとにした目安です。実際にはここから出店料や燃料費などのコストも引かれるので、その分の余裕も見込んでおくと安心です。
まずは食材費から逆算して、理想の価格と、これ以上は下げたくない最低価格を決めておきましょう。最低限の利益を確保できる範囲がわかっていれば、値引きやサービスをするときも、利益を削りすぎずに判断できます。
まず今週、小さな一歩を踏み出す
いきなり全部を整える必要はありません。まずは今週、これだけ試してみてください。
「1週間の売上と食材費を記録してみる」
スマホのメモでも、レシートをまとめておくだけでも。
「なんとなく」から「ちょっとだけ数字を見る」に変えるだけで、キッチンカーの経営は少しずつ安定していきます。小さな記録から、始めてみましょう。
