キッチンカーの開業費用を調べると、「250万円で開業できた」という記事もあれば、「700万円かかった」という体験談もあります。どちらが自分に近いのか、調べるほど判断しづらくなるという声もよく聞きます。
この記事では、開業費用の目安と内訳を整理し、費用の幅が生まれる理由、車両の入手方法による違い、削ってはいけない費用と抑えやすい費用、資金が足りない場合の選択肢まで、順番に確認できるようにまとめました。
キッチンカーの開業費用はいくら?目安と3つのポイント
開業費用の目安は250〜400万円
キッチンカーの開業にかかる費用の目安は、250万円〜400万円程度です。実店舗を構えるより少ない資金で始めやすいのが特徴です。ただし、この金額はあくまで目安であり、実際にはかなり幅があります。たとえば、中古車をベースにシンプルなメニューで始める場合、100万円台に抑えられることもあります。反対に、大型車両を新車で製作し、調理設備を新品で揃え、車体のフルラッピングや仕込み場所の保証金まで含めると、700万円近くに達するケースもあります。
開業費用は主に、次の3つのポイントで変わってきます。
費用を左右する3つのポイント
1. 車両の入手方法
車両費は開業費用の中でもっとも大きな割合を占める項目です。新車で製作する場合と、中古車をベースにする場合では、費用に100万円以上の差が出ることがあります。
2. 販売するメニューの種類
ドリンクや温めだけで提供できるメニューに比べ、クレープやたこ焼き、揚げ物のように専用の鉄板・フライヤーや換気設備が必要なメニューは、調理設備への投資額が大きくなりやすいです。
3. 開業時点でどこまで整えるか
車両の装飾や店舗のロゴ作成にどこまでこだわるか、備品を新品で揃えるか中古で揃えるかなどによっても、費用の積み上がり方は変わってきます。
費用の内訳:何に・いくらかかる?
車両費
前述の通り、車両費は開業費用の中で最大の項目です。入手方法別のおおよその目安をまとめました。
入手方法 | 費用目安 | 特徴 |
|---|---|---|
新車購入(専門業者による製作) | 150〜350万円 | 設備・内装を希望通りに設計できる |
中古車購入(改造込み) | 50〜150万円 | 初期費用を抑えやすい。車両の状態確認が重要 |
車両購入+DIY改造 | 50〜100万円 | 材料費・工具代で仕上がる場合もある。時間と技術が必要 |
レンタル | 1日3〜10万円 | 購入費不要。短期・お試し向き。長期は割高になりやすい |
リース | 月額4〜13万円+頭金 | 頭金を抑えて長期利用できる。累計は購入に近づく |
入手方法ごとの特徴や向き・不向きは、次の「車両の入手方法で開業費用は大きく変わる」で詳しく見ていきます。
調理設備・許可申請・仕込み場所費
車両以外にかかる主な費用は以下の通りです。
項目 | 費用目安 | 備考 |
|---|---|---|
調理設備(コンロ・冷蔵庫等) | 30〜100万円 | メニューの複雑さにより差が出る |
食品衛生責任者資格の取得 | 1万〜1.2万円程度 | 自治体・受講形態により差がある |
保健所への営業許可申請 | 1万〜1.8万円程度 | 自治体により差。出店エリアごとに申請 |
仕込み場所の確保(レンタルキッチン等) | 月1〜5万円程度 | 自宅キッチンが使えない場合に発生する |
仕込み場所のコストは、費用計画で見落とされがちな項目です。キッチンカーは保健所の許可を取る際、「衛生基準を満たした場所で仕込みを行う」ことが前提になります。一般的な自宅のキッチンは仕込み場所として認められないケースもあります。その場合はレンタルキッチン(調理設備を時間単位で借りられる施設)やシェアキッチン(調理設備を共有する施設)を借りる費用が月ごとに発生します。
備品と初期運営資金
開業時には、什器・消耗品・包材・ユニフォームなど細かな備品も必要になります。これらを合計すると10〜30万円程度を見ておくのが一般的です。
さらに、開業直後は売上が安定しないことが多いため、3ヶ月分の運営資金(仕入れや出店料、仕込み場所の利用料などに充てるお金)を手元に確保しておくと安心です。月の経費が20万円かかる想定であれば、60万円程度の現金が別途必要という計算になります。
開業費用に加えて初期の運営資金も確保しておくことは、費用計画で見落としやすいポイントです。
車両の入手方法で開業費用は大きく変わる
車両の入手方法は、大きく「購入する」か「借りる」かの2つに分かれます。購入するなら新車製作・中古車改造・DIY改造の3通り、借りるならレンタル・リースの2通りです。
購入する場合:新車・中古車・DIYの選び方
新車製作
キッチンカー専門の製作業者に依頼する方法です。メニューや動線に合わせて内装・設備を設計できるため、開業後の使い勝手が高くなります。費用は前述の表の通り5つの方法の中でもっとも高くなりやすく、こだわりが増えるほど上振れします。
製作期間は1〜2ヶ月程度が目安で、開業日からの逆算が必要です。
中古車改造
ベースとなる車両を中古で購入し、必要な改造を加える方法です。新車で製作するより費用がかからないケースが多く、初期費用を抑えたい場合の選択肢になります。
ただし、車両の状態や年式によっては、その後のメンテナンス費用に影響が出てきます。「安く買えたが、頻繁に修理が必要」という話も少なくないため、購入前には状態をじっくり確認しておきたいところです。
DIY改造
ベースとなる車両を購入し、改造を自分で行う方法です。材料費・工具代だけで済むため、業者に依頼するより費用を大幅に抑えられる可能性があります。一方で、保健所の許可基準を満たす施工が求められます。
車両改造に必要な技術(木工・電気配線・給排水の取り付けなど)が十分にあり、時間も確保できる方に向いている選択肢です。
借りる場合:レンタル・リースはどんな人に向いている?
レンタル
車両を必要なときだけ借りる方法です。料金は日額が基本で、平日は1日3〜5万円、土日祝は1日7〜10万円程度が目安です。購入費が不要なため、まず試してみたい方や、イベント・週末だけといった短期出店に向いています。一方で、高頻度でレンタルをし続けると、購入より割高になりやすい点には注意が必要です。
リース
車両を長期契約で借り、月額を支払っていく方法です。幅はありますが、頭金30〜150万円程度に加え、月額は小型で4〜6万円、中型で8〜10万円、大型で10〜13万円程度が目安です。初期費用を抑えつつ長く使いたい場合の選択肢になります。何年くらい使うかを踏まえて、購入費用と比較しておくと判断しやすくなります。
5つの方法を初期費用・長期費用・自由度で比較すると、次のようになります。
入手方法 | 初期費用 | 長期費用 | 自由度 |
|---|---|---|---|
購入(新車製作) | 高い | 中程度 | 高い |
購入(中古車改造) | 中程度 | やや高め(メンテ次第) | 中程度 |
購入(DIY改造) | 低い | 低め | 中程度 |
レンタル | 低い(日額) | 高い | 低い |
リース | 中程度(頭金) | 中〜高め | 低い |
削ってはいけない費用と、抑えやすい費用はどれ?
開業費用はできるだけ抑えたい、と考える方は少なくありません。ただし、削ってはいけない費用を削ってしまうと、後々営業できないリスクや、事故のリスクにつながりかねません。
削ってはいけない費用(許可・衛生・保険)
食品衛生責任者の資格取得
受講料は1万〜1.2万円程度※1ですが、取得しないと営業許可が下りません。オンライン講習が整備されている自治体も増えていますが、省略できる項目ではありません。
- ※1東京都の例:食品衛生責任者養成講習会 受講料 10,000円+教材費 2千円ほど
参考:公益社団法人東京都食品衛生協会
保健所への営業許可申請
出店するエリア(自治体)ごとに申請が必要です。費用は1件あたり概ね1万〜1.8万円程度※2で、自治体によって差があります。これを取得しないと営業そのものができません。複数エリアで出店する場合は、エリアの数だけ申請が必要になります。
- ※2東京都渋谷区の例:自動車(キッチンカー)の飲食店営業許可 手数料 18,300円
参考:東京渋谷区「自動車の営業許可申請」
自動車保険・損害賠償保険
車両の任意保険に加え、営業中の事故・食中毒などに備えた賠償責任保険への加入も検討が必要です。加入していない状態でトラブルが起きた場合、事業継続が困難になるケースがあります。
初期に抑えやすい費用
外装・装飾
店舗ロゴや車両デザインは、開業後に売上が安定してから投資する方も多いです。最初はシンプルな状態でスタートし、徐々に自分らしさやお店の見せ方を考えて、改善していくという選択肢もあります。
備品類
容器・ラッピング・調理小物などは、開業時点では必要最小限でスタートし、実際の運営の中で必要なものを追加していく進め方が合理的です。
テント・テーブル等
屋外出店で使うテントやテーブルなどは、中古品や汎用品で代用できることがあります。専用品にこだわらなくても、運営には支障が出ないケースが多いです。
資金の準備と調達
自己資金の目安と準備の考え方
必ずしも、開業費用のすべてを自己資金で用意する必要はありません。ただし、融資を受ける場合でも、自己資金がある程度用意できていることが審査上プラスに働きます。目安として、開業費用全体の3分の1程度を自己資金として準備できると、資金計画が立てやすくなります。
250万円の開業を想定する場合、80〜100万円程度を自己資金として用意し、残りを融資で補うイメージです。
創業融資の仕組みと活用例
キッチンカーの開業費用は、日本政策金融公庫の「新規開業資金」を活用するケースが多くあります。無担保・無保証人で利用できる制度があり、創業前の段階でも申請できます。
融資を受けるには事業計画書の提出が必要です。いくら必要で、どのように返済するかを数字で示せる状態にしておくと、審査がスムーズに進みます。
補助金・助成金の存在と注意点
小規模事業者持続化補助金など、開業後の販促活動や設備投資に使える補助金・助成金制度が複数あります。キッチンカーの設備購入や集客ツール整備に活用できるケースもあります。
ただし、補助金・助成金の活用においては、以下の点に注意が必要です。
- 申請から採択・入金まで時間がかかる(採択後の事業実施・精算を経て、入金まで半年〜1年程度かかることもある)
- 原則として先払いが求められる(採択後に費用を立て替えて、後から補助される仕組み)
- 採択が保証されているわけではない
「補助金をあてにして開業費用を計算する」のではなく、補助金はあくまでプラスアルファとして位置づけるのが現実的な考え方です。
まとめ
あらためて、ここまでの内容を整理すると以下の通りです。
確認項目 | 内容 |
|---|---|
費用の目安 | 250〜400万円程度(車両・設備により100万円台〜700万円近くまで幅がある) |
費用の主要項目 | 車両費・調理設備費・許可申請費・仕込み場所費・備品費・運営資金 |
削ってはいけない費用 | 食品衛生責任者の資格取得・保健所の営業許可申請・各種保険 |
初期に抑えやすい費用 | 外装装飾・備品類・テント等什器 |
資金の準備方法 | 自己資金+日本政策金融公庫の創業融資、補助金(後払い型) |
キッチンカーの開業費用について、イメージできたでしょうか。
「いろいろとお金がかかりそう…」という漠然とした不安が減って、「自分の場合はこの範囲になりそう」という見当がついていれば、費用計画の第一歩を踏み出しています。
費用の全体像がつかめたら、次は開業に必要な資格や許可についても確認しておきましょう。キッチンカーの営業に必要な資格・許可の取得手順や費用、注意点を次の記事で紹介しています。

