未経験でもキッチンカーの開業はできます。「飲食業の経験がないから難しいのでは」という不安は、よく聞く声のひとつです。
未経験からのキッチンカー開業について、事前に知っておきたいことをまとめました。必要な準備や、メニューの選び方、少ない投資で始める方法を見ていきます。
未経験でも開業できる?よくある3つの誤解
キッチンカーの開業を検討しているけど、経験がないがゆえに「難しそう」「自分には無理かも」と感じる方も多いのではないでしょうか。
難しそうと感じるのは、次のような誤解のせいかもしれません。
調理師免許がないと始められない?
答えはNOです。調理師免許は、キッチンカー開業において法的な必須要件ではありません。
キッチンカー開業に必要なのは、食品衛生責任者の資格と、保健所への営業許可の申請です。
食品衛生責任者は、約6時間の講習を受ければ取得でき、専門的な調理訓練は不要です。
調理師・栄養士・製菓衛生師などの資格を持っていれば、食品衛生責任者の要件を満たせる場合がありますが、そうした資格がなくても、講習さえ受ければ問題ありません。
飲食業の経験がないと難しい?
飲食業の勤務経験がキッチンカー開業の法的要件に含まれることは、ほとんどありません。必要な資格と許可を取得すれば、未経験でも始められます。
一方で、経験がないことで差が出やすい部分はあります。仕込み量の読み・提供スピード・原価の計算・衛生管理の段取りなどです。
これらは、営業を続けながら身につけていくこともできますが、場合によっては、経験豊富なキッチンカー事業者さんのもとで実際にスタッフとして働かせてもらうなど、修行期間を設けるのもひとつの手段です。数日だけでも、開業前に実際にオペレーションを体験してみることで、キッチンカーならではの大変さや、工夫すべきポイントを知ることができます。
実際に修行期間を経て独立した事業者さんのインタビューも、ぜひご覧ください。
営業許可さえ取ればどこでも出店できる?
こちらも答えはNOです。「営業許可さえ取れば、どこでも自由に出店できる」というのも、よくある誤解です。
営業許可は、車両の設備を保健所が検査し、食品衛生法の基準を満たしていると認めるものです。あくまで「この車両で調理・販売してよい」という許可であり、「どこで出店してよいか」とは別の話です。
道路・公園などの公共の場や、商業施設・イベント会場・企業敷地内で出店するには、それぞれの管理者や自治体への許可が別途必要です。出店場所ごとのルールを確認する必要があります。
キッチンカーの出店場所にはどんな種類・特徴があるのかについては、以下の記事でまとめています。
キッチンカーの出店場所を種類別に整理|特徴と向き不向きキッチンカーの出店場所をオフィス・商業施設・公園など4タイプに整理。各タイプの特徴と向き不向き、場所選びのポイントをまとめました。
未経験者に向いているメニューの選び方
キッチンカーを始めたいものの、メニューに悩んでいる人も中にはいるのではないでしょうか。
最初から「これでいこう」とメニューが決まっている人ばかりではありません。
メニューの選び方は、開業後の負担の大きさを左右します。
メニュー選びで意識したいポイント
キッチンカーの調理スペースは限られています。工程が多く提供に時間がかかるメニューは、オペレーションが複雑になりやすく、未経験者には負担が大きくなります。
メニューを選ぶ際に意識したい条件は、次のとおりです。
- 調理工程が少ない
- ひとりでもオペレーションを回せる
- 食材のロスが少ない
- 提供スピードが速い
- 衛生管理がシンプル
- 設備投資が少ない
メニューが決まると、必要な設備の規模も見えてきます。車両には、調理で使った水をためておく給排水タンクを積む必要があります。その容量は、2021年6月の食品衛生法改正以降、40L・80L・200Lの3区分に全国的に統一されました。
茹でる・洗うといった水を多く使う工程が多いメニューほど、大きい区分が必要になりやすく、車両も大きく・費用もかさみやすい傾向があります。一方、仕込み済みの食材を温めて提供する程度のメニューであれば、40Lの区分で収まる場合もあります。
どの区分になるかは、提供するメニューや保健所の判断によって変わるため、車両を決める前に保健所へ確認しておくと、余計な設備投資を避けやすくなります。
未経験者が選びやすいメニュー例
複数の開業事例とメニュー別の提供条件をもとにした、未経験者に比較的向いているメニューの一例です。
メニュー | 未経験者に向いている理由 |
|---|---|
ホットドッグ | 焼いて挟むだけで工程が少なく、提供が速い |
カレー | 前日に仕込めば当日は盛るだけ。提供が速く、日持ちしてロスも出にくい |
タコライス | 具材を仕込んでおけば、盛り付けるだけで提供できる |
丼もの | ご飯と具を用意すれば提供が速く、調理工程が少ない |
コーヒー | 設備が少なく仕込みも軽いため、初期負担を抑えやすい |
フライドポテト | 揚げるだけで工程が少なく、原価も抑えやすい |
最初は欲張らずに1〜2品に絞り、提供スピードと品質を安定させることから始めましょう。
安定して提供できるようになってきたら、少しずつメニューやバリエーションを増やしていくと無理がありません。
キッチンカーのワンオペ向けメニューの作り方とは?キッチンカーのワンオペを安定して回すには、メニュー設計が鍵です。仕込み・工程・食材のシンプル化で1人でも対応しやすくなる考え方を解説します。
まずはお試しから。キッチンカーを小さく始めてみる方法
「車を買って、改装もして、初期投資が大変…」「最初から売れるとは限らず、収入が減るのが不安…」。未経験の場合は、特にこのような心配ごとが多いのではないでしょうか。
ここでは、いきなり大きな投資をしなくても、キッチンカーを始められる方法を紹介します。
車両をレンタル・リースで用意する
キッチンカーの車両をレンタルやリースで入手する方法もあります。本格的な設備投資の前に、まずは短期間から試してみるのも選択肢のひとつです。
レンタルとリースの違いと費用の目安は、次のとおりです。
車両の入手方法 | 特徴 | 費用の目安 |
|---|---|---|
レンタル | 設備の整った車両を短期からすぐ使える | 1日3〜10万円 |
リース | 月額を払い長期的に使う。初期費用を抑えられる | 月額4〜13万円+頭金 |
副業として週末のみから始めてみる
キッチンカーは、必ずしも毎日営業しなくても始められます。週末だけ、月に2〜3日だけのように、少ない出店日数からスタートし、十分に感覚をつかんでから、本格的な出店に切り替える方法もあります。
本業と並行してまずは副業から始めてみることで、いきなり収入を下げることなく、リスクを抑えながら実務経験を積むことができます。
キッチンカーの開業費用についてもっと詳しく知りたい場合は、以下の記事もご覧ください。
保健所への事前相談
車両・設備を準備する前に済ませておきたいのが、保健所への事前相談です。
設備の基準(給排水タンクの容量・シンクの数など)は、メニューと自治体の基準によって変わるため、多くの保健所では、事前相談が推奨されています。
出店予定地を管轄する保健所のホームページ等を確認してみましょう。
まとめ
未経験からのキッチンカー開業、少し具体的にイメージできたでしょうか。
キッチンカー開業の大まかな流れは、次のとおりです。
- コンセプトとメニューを決める
何を・誰に・どこで売るかを大まかに決める。メニューは1〜2品からスタートが現実的
- 食品衛生責任者の講習を受ける
講習を受けて資格を取得する
- 保健所へ事前相談する
出店予定地の保健所へ、メニューと設備の概要を伝えて相談する
- 車両・設備を準備する
保健所の確認をもとに、必要な設備を備えた車両を用意する。レンタル・リースも可。
- 営業許可を申請する
準備が整ったら申請。設備確認後に許可証が交付される
- 出店場所の許可を取る
出店したい道路・公園・施設などの管理者や自治体に、別途出店の許可を得る
- 出店スタート
まずは少ない出店日数から始め、徐々にメニューとオペレーションを改善していく
記事内で紹介した関連記事も、ぜひ参考にしてみてください。




